丘の上でII

どこか寒い国の
小高い丘の上でふたり
背中合わせのまま息絶えよう

その瞬間
獲得される360度の視界

どこか寒い国の
小高い丘の上でふたり
背中合わせのまま息絶えよう

丘の上で

力なく後ろ手を組んで
君が背中越しに僕を笑う

視線の先を照れているから
僕が気づかない振りなのを知っているから
君は意地悪に僕を笑う
だから思い出したんだよ

「あなたにわかるはずがないでしょ
空を飛べるわけでもないんだから」

飛べたさ
今だって飛び方まで忘れたわけじゃない
嘘だと思うなら今は飛べない僕の手をとるといい

休むことなく酷使された僕のぼろぼろな羽根を
意地悪な君のようにいつも神様は笑ってた
そのうち呆れて新しい羽根をくれなくなったけれど
別に構わないと思ったよ
もう充分に飛んだからね

誰かを思う気持ちのように
横隔膜を下から押し上げられるように
空を思う気持ちは空へと向かい
浮かない顔でも空は君を
君を汲んで君を拾い上げるから

ただ君は誰かを思うように思えばいい
背中から心臓を鷲掴みにされるように
痛むのも胸が詰まるのも一瞬だけだよ
あとは君に向かう風が君を誘うから
なんにも心配は要らない

ほら見えるかい
陽の光を集めたような綺麗な羽根だね
もう大丈夫
あとはほんの何歩かだけつま先で地面を掻くだけで
そうそう、そのまま、そのまま

さあ僕の役目は終わり
もう手を放してもいいよ
飛べない僕のことは忘れて
君を受け容れた空と遊ぶといいよ

大丈夫
こういう言い方するときっと怒るんだろうけどさ
いいかげん見送るのも慣れたから平気だよ

そして君は僕の真上から
君はまた呆れたように僕を笑う

なんか懐かしいなあ
ずっと忘れてたけど
飛び去る君に重なる君を思い浮かべながら
もう少し僕も空を眺めていよう
もう少し君と空を眺めていよう