水晶振動子

忘れたいことなんて本当はないのかもしれない
駆られるように偽るだけで衝動なんてないのかもしれない

地に着ける足さえ見失った僕は
上下のない空間で自身を薄膜に削っている

君と居られたなら僕はきっと
いくつかの不安を手に入れられたのに

僕のためにあつらえられた不安に埋もれながらなら僕は
ただ静かに震えていることができる
たぶん僕はいくつかの不安の間で振動することでしか
心臓の鼓動を一定に刻むことすらできないのだから

君がくれた時間軸で僕は
君と君の想いの距離を測り
君と君の迷いの距離を測り
君が向かうべき君を指し示してあげられる

それでよかったのに
それで幸せだったのに

やがて君は自分が何がしかのものを手に入れたことを理由に
僕にも君の理解の範疇の何がしかのものを手に入れさせようとし始める

君は不安をくれなくなる
せっかく手に入れた僕の不安を取り上げてしまう
時間軸を失った僕は君を見失い
君の迷いは再び君に降り積もる

憐憫と不平等感が隔絶する
君の空間と僕の鼓動

そして僕は衝動を偽りながら自身を薄膜に削る
ひとりでも正確に時を刻めるように

また誰かに不安をねだらないように
また誰かの手を引けるように