skinner box

壁に小さなレバーのついた
このガラス張りの部屋の中で
僕は今から君のことを好きになります

誰かのことを好きになるってどういうことか
好き嫌いのみに生きるってことがどういうことか
そこからじっくり見ているといいよ

もし僕がこのレバーを押したとしたら
君はそのガラスの向こうから
いったい僕に何をくれるというの?

壁に小さなレバーのついた
このガラス張りの部屋の中で
僕は今から君のことを好きになります

情熱然としたものの裏側に醜く張り付いているものや
高鳴る鼓動と猛烈な吐き気のあいだにあるものを
そこからじっくり見ているといいよ

わがままIII

君がもし僕の不安を思うのなら
君を隠さないでいて

また会える?
メールしてもいい?

そんな君の不安が僕を救うから
君を隠さないでいて

また会いたいよ
話したいことだっていっぱいある

ねぇ、そばにいるよ
いなくなったりなんてしないから

君がもし僕の不安を思うのなら
君を隠さないでいて

わがままII

ほかの尺度なんてもう要らない

それが僕にとって
どのくらい大切かってことと
それをどう大切にするかってこと

それだけで構成されていたいと思うよ

僕の意思ではない優しさのようなものが
無人販売の野菜のように買われていくだけなら

花の代わりに値札をあてがわれる花瓶のように
花さえ活けてもらえないのなら

僕は僕の責任において
もっとわがままであるべきなんだ

そう、例えば君のことさ

いま君が僕にとって
どのくらい大切かってことと
君をどう大切にするかってこと

それだけで構成されていたいと思うんだ

線香花火

この両の手のひらをそっと合わせたら
その中に閉じ込めてしまえるほど

小さな空間ではじけるこの光が
こんなにも暖かいなんて

思わず顔を近づけてしまうけれど

小さくても炎だものね
きっと火傷しちゃうよね

こうして僕を照らす断続的で小さな光が
こんなにも眩しいのはきっと

その一粒一粒が僕の中にある
断続的で流れ落ちるような僕を照らすからだね

この両の手のひらをそっと合わせて
その中に閉じ込めてしまいたいけれど

小さくても炎だものね
きっと火傷しちゃうよね

触媒

確かめあえた柔らかくなる呼吸
そばにいるということ

重なりあっていた鼓動と
それを軸に再構成されていた君は

君はたしかにそこにいたから
消えない記憶が次第に断片化しても

君はいまでもそこにいて
そこがどこのなのかわからなくなることに怯えながら

目の前にある何もない空間をすくい取っては
その手に何もないことを嘆くんだね

その手に感覚が残っているうちに
その手が冷え切ってしまう前に

記憶といっしょに断片化する君を
そっと君に繋ぎましょう

このくらいだけそばにいるから
その手を伸ばしてごらん

その手のひらに温度をあげる

だいじょうぶ
君はそこにいるよ

君はそこにいるからね