しあわせのかたち

わかってはいるんだ

強い波形を持つ代わりに
瞬間にしか宿ることのない
鋭角を持ったしあわせのかたち

それは純粋であるがゆえに
満たされ続けることのないかたち

わかってはいるんだよ
それはひとつのかたちだけれど

それだけを求め続けていたら
きっと心は疲れてしまう

鋭角を握り締め続けたその手の痛みさえ
あなたはもう忘れてしまったのでしょ?

瞬間に切り裂かれた感覚を埋めるのは
きっとどこにでもあるような
凡庸な「あたたかさ」なんだ

これといった強い波形を持たず
継続する時間にしか宿らない
もうひとつのしあわせのかたち

その手を開いてくれるのなら
その痛みを溶け出させるための
適度な広さの「体温」をあげるから

溺れないぬるま湯に溺れるように
ただここにいればいいと思うよ

思いがそこにあったことを
いまここにある思いそのものを
ひとりにしておくのはいけないことなんだから

適温に戻る痛みを感じられるまで
いまはただここにいればいいと思うよ

easy gallop

すべてのものにはリズムがあって
同調されるのを待ってるんだ

揺れるあなたの視界には
あなたか知覚しているよりもっと
たくさんの景色が映っているはず

でもあなたは自分の鼓動さえ
もてあましてしまうから

もてあまされた鼓動は
外側にあるリズムに嫉妬してしまうの

揺れる視界を感じてあげて
あなたをとりまく世界はずっと
あなたの刻むリズムを待ってるんだ

いまはあなたのそばにあるそのリズムに
身を委ねてみてもいいと思うよ

そっとそっと息を整えて
少しずつ呼び起こせばいい

あなたの内側にあったはずの
わずかにゆらぎながら刻む生きたリズムを

感じてほしいんだ
その目に映るすべてのものを
暖かくなるこの世界を

そして暖かくなるはずだった
取り残されたあなたの鼓動を

すべてのものにはリズムがあって
あなたに同調されるのを待ってるんだよ

君の中心

いまは遠く見えない
闇の色の重なる向こう
重なる色のいちばん深いところで

しゃがみこんで震えている
君を感じているよ

かすかな音に耳を澄ますように
音にもならない振動を増幅させるように

君にこの手を差しのばしましょう

いまは遠く見えない
闇の色の重なる向こう
重なる色のいちばん深いところ

そこがきっと君の中心
震える君が君そのものだから

かすかな音に耳を澄ますように
音にもならない振動を増幅させるように

震えるその手を伸ばしてごらん

いまは触れあえなくても
震える手と手を感じあえるなら
僕らはもうひとりじゃないから

しゃがみこんで震えている
君はたしかにそこにいるよ

プレゼント

何かほしいものある?

そんなふうに訊かれるの
実はちょっと苦手なんだ

自分で手に入れたいものと
誰かからもらったらうれしいものって
ちょっと違うような気がするの

何を贈ったらいいのかって
あれこれ考えてくれることだって
いとおしんでいたいと思うし

それにね
それを受け取ったときには
少しばかり的外れに感じたとしても

たぶん自分ひとりでは選ばなかったそれを
君が選んでくれたそれを
きっと僕は気に入っていくのだと思う

それがさ
世界が拡がっていくってことなんじゃないかな

だから僕らは
こうしていっしょにいるんだと思うんだ

フライホイール

ときには慣性に身を任せても
動いていたほうがいいこともあるよ

背中を押してほしいとは思わないけど

同じ景色を気が済むまで見つめていられるなら
それはとても素敵なことだけれども
それをつらく思うようなときは
目に映る景色を変えてあげなくちゃいけないんだ

最初の一歩さえ踏み出せるなら
ゆっくりと歩き続けることはできるよ
景色といっしょに感じかたも変わるから
そのうちきっと何か見つかるさ

ときには慣性に身を任せても
動いていたほうがいいこともあるよ

背中を押してほしいとは思わないけど
少しのあいだそこで見ててくれる?

temporaries

綴りましょう
感情の切れはしを
そのままで構わないから

できるだけ手を加えないように
切れはしが呼び合えるように

あなたの大切なひとが
いまどこかで泣いているとしても
自分には何もできないって本当に思うの?

僕らはたくさんの方法を手に入れた
距離感だって変えられるはずだよ

電波越しに
ケーブル越しに
わずかな切れはしを手がかりにして

呼び合えもしないのなら悲しすぎるでしょ?

だから綴りましょう
感情の切れはしを
切れはしは切れはしのままで

受け取りましょう
できるだけ手を加えないように
僕らの切れはしが呼び合えるように

感じられるさ
僕らは翼を手に入れたんだ