知覚される現実は花

ひとりでは
安定しない空間に

雨は染み込むこともなく

知覚されないまま現実は
指の隙間を流れ落ちて

僕を乾いた
砂に変えていくんだ

そう僕がもし

君が差し伸べた手に
触れることができるなら

感覚の重なる部分に

僕のうちのいくつかは
引っかかることができて

それがささやかな
地面になっていくと思うんだ

君を滑り落ちる
不揃いな砂粒といっしょに

堆積していけると思うんだ

そしたらほら

もう雨に削られるばかりじゃなく
水分を蓄えてみたり

陽の光に乾くばかりじゃなく
熱を蓄えてみたりできるから

ときおり風が運ぶ種の
爛漫な気まぐれだって

引き寄せられるかもしれないでしょ

知覚される現実は花

だから僕らは
できるだけ僕らをこぼさないように

感覚を重ねていきましょう

君が縦糸なら僕が横糸
そんなふうに

感覚を編み上げていきましょう

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holy grail

鏡の本当の役目は
少しだけ時間を遅らせること

だから向き合えないはずの自分と
向き合えたりするけれど

それは気づかないほどの一瞬を隔てた
過去の自分の姿

いつも鏡の前を離れ
どこかへ向かう自分を

鏡のなかの自分が
見守ってくれているから

流れる時間に
恐怖を覚えることなく

僕らはどこかしらへ
向かうことができる

鏡が留めてくれた
少しだけ遅らせた時間

思い通りにならないような
歯がゆさといっしょに

止まらない日常に余韻をくれる
ささやかな魔法

規則的に刻む時間を空間に溶かす
やわらかな残響

interrupt

たぶん堂々巡りになるから
指摘しないことにしてるんだけど

君がいつも言ってることは
正確じゃないと思うんだ

僕が口癖のように
「大丈夫だよ」って言って

それが君をなんとなくでも
安心させることができて

それが僕らが
いっしょにいる理由のうちの

重要な位置を占めていることは
間違いないのだけど

僕の「大丈夫だよ」は
口癖なんかじゃなくて

君や君のしぐさが
僕の視界に入ってるときの

ただの僕の感想を
毎回うっかり口にしてるだけで

つまり先に安心してるのは
僕のほうだと思うんだよ

そんなことをたまには敢えて
指摘してみたりもして

ふたりして少しばかり
不機嫌な顔をするのも悪くないし

そのあとどっちが先に
笑い出したかなんて

結局僕らはいつのまにか
忘れてしまうわけで

そんなことだから僕らはきっと
いっしょにいられるんだね

そんなことだから僕らはずっと
いっしょにいられるんだね