micelle

君がまっすぐに
僕を見つめている

ほんとのあたしを
見つけてくださいって

見つめかえす僕が
何か魔法でも使って

なんとかしてくれるって
君は信じている

僕はそんな便利な
魔法なんて使えないけど

君のためだったら
魔法をかけるふりくらいできるよ

僕をまっすぐに
見つめている瞳を

ちょっとのあいだだけ
閉じていてください

呼吸を忘れそうな
その唇にそっと

僕の鼓動を
重ねてあげましょう

ほんとの「あたし」は
ちゃんとそこにいますよって

たったそれだけの
君にしか効かない魔法なんだからね

ふたつめの

うたた寝の耳の奥に
残る雫の音は君の

きっと君の
涙なんだろう

ふたつめの雫をつくる
震えるその下弦は君の

きっと君の
逡巡なんだろう

手を伸ばせば僕を
濡らさぬよう気遣って

きっと君は
もっと惑うだろう

足りないのはたぶん
きっかけだけなんだって

きっと君も
わかってるだろうから

君の頭をただそっと
ぽんぽんって叩いて

出ておいでって
言ってあげたいのに

うたた寝の耳の奥に
残る君の音を僕の

右手の温度に
つないでおきたいのに

chocolate shell

ちょっとビターに
君を包みましょう

君を包む
冷たさと堅苦しさを

中和するように
君を包みましょう

境目を
知覚できなくなるくらい

ぴっしりと
君に張りついて

君の白さをもっと
引き立ててあげましょう

君の甘さをもっと
引き出してあげましょう

cochlea

砂浜に取り残された
巻貝を耳に当てて

寄せては返す
波音に思いを馳せる

少しばかり褪せた色が
もの悲しく思えたから

戻る波間にそっと
還してあげようと思ったんだ

ふと目覚めた
真夜中の動かない空気に

はしゃいだ時間が
色褪せそうになっても

寄せては返す
君の吐息がそこにあるから

眼を閉じて夜を
動かしてあげようと思ったんだ