crinkle

吹く風に
もう秋の匂い

耳の奥で
懐かしい音

そう
君のお気に入りだった

すこし紫がかった
こんな夕焼けの色の

絞りスカートの
衣擦れの音

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fluorite

君らしさという
その色彩を

割れないように
そっとあたためて

君のなかに眠る
君を確かめよう

君がまだ知らない
ちっちゃな君が

君のなかには
まだいっぱいいてね

ときどき見上げたり
またうつむいたりしながら

君になりたくて
君と手をつなぎたくて

うずうずしながら
ずっと待ってるんだ

だから君を
包んでいる君を

割れないように
そっとあたためて

君と君をもっと
仲良しにしてあげよう

exodus

君はオアシスなんて
ないんだって言った

もし見えたとしたら
それは蜃気楼だって

だからこの左手には
たったひとつの水筒だけ

この生ぬるい水ならちゃんと
現実とつながってるから

そして右手には君の
ひどく乾いた手をとって

砂の襞を縫うように
ゆっくりと歩いていこう

そうオアシスなんて
ほんとうはないんだよ

蜃気楼なんて見えない
だからだいじょうぶさ

身体に染み渡っていく
生ぬるい水の一滴だけ

信じていればいい
いまはそれだけでいいんだ

砂まみれの乾いた手が
体温を伝えてくれなくても

ちょうど水筒ひとつぶんだけ
僕らはつながっているんだから

soda float

現実が自分の
意思とは無関係に
手の上を滑るのを

君はずっと嘆いていて

ただ無造作に
時間軸上に並ぶ
役割を持った自分が

きっと他人事のようで

忘れられた
飲みかけのソーダ水の
炭酸が抜けるように

宙を舞う思いだけは

押し留めたくて
伸ばしたその手が
空を掻いてしまうのを

もう見ていられないから

甘さだって
感じないくらいに
よく冷えた僕の思いを

君にそっと載せてみよう

僕の思いが
少しずつ溶け出して
君を絡めとるように

君を留めていけたらいいな

corundum

透き通る
心に傷がつくことを
君は怖がって

降り注ぐ光や
吹きつける風を
遠ざけてしまった

温度差は
心を曇らせたり
ときには欠けさせたりするけど

それは心が
どうありたいかを知るための
大切な手がかり

透明度を
失った君を通過する
光は君らしく分光して

刻々とその
色を変える君の
心の色を僕に映すよ

わずかな欠けを
なぞるように吹く
風は君を振動させて

君の思いを
そっと奏でるように
心の音を届けてくれる

いつか欠けた
僕自身の心のかけらを
僕は捨てられずにいて

こんなときのために
細かな砂粒にして
とっておいてあるから

もしも君が
曇りすぎて
光を通さなくなるなら

この砂粒を
研磨剤にして
君を磨いてあげられるよ

もしも君の
欠けが大きくなって
君を壊しそうになるなら

この砂粒を
涙でくっつけて
君の一部にしてしまおう

それでたぶん
たいていのことは
だいじょうぶだから

君よどうか
傷つくことを
恐れないでいてください

君よどうか
悲しむことを
恐れないでいてください